2011年11月10日木曜日

研究室中間発表会

昨日は 9:30-11:30, 12:15-14:20 の時間で生物制御化学研究室と化学生態学研究室合同の博士論文,修士論文,卒業論文の中間発表会が開催されました.例年,研究室の中間発表会は年末に実施していて,それが終われば忘年会というのが恒例になっていましたが,年末に「中間」発表では論文作成には時期的にもう手遅れということになってしまい兼ねないということで,今年から 11 月に実施することになりました.


生物制御化学研究室では,今年度の博士課程修了予定者 1 名,修士課程修了予定者 1 名,卒論提出予定者 4 名です.博士論文の提出は 12 月初め,発表会は 1 月,修論提出は 2 月初め,修論・卒論の発表会は 2 月中旬予定です.何より自分自身が納得のできる論文になるように,あまり多くない残りの時間を有効に使って研究を進めていただきたいところです.

2011年11月8日火曜日

今井卓也君の論文が Biosci. Biotechnol. Biochem. 誌に受理 & 井坂哲也君の論文がオンライン公開

11 月 6 日に修士課程 2 年生の今井卓也君を筆頭著者とする論文が日本農芸化学会の英文誌 Biosci. Biotechnol. Biochem. 誌に受理されました.この論文は今井君の修士論文研究の一部で,農業生物資源研究所の大橋祐子先生らとの共同研究成果です.


Takuya Imai, Yuko Ohashi, Ichiro Mitsuhara, Shigemi Seo, Hiroaki Toshima, and Morifumi Hasegawa, Identification of a degradation intermediate of a rice phytoalexin, momilactone A, by rice blast fungus. Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.


イネいもち病菌がイネの生産する主要なフィトアレキシンであるモミラクトン A を分解するときの中間体の構造解析,合成,定量分析を行った論文です.フィトアレキシンは植物が病原菌の侵入に対して防御反応として蓄積する抗菌活性物質ですが,病原菌はこの防御反応を回避するためにフィトアレキシンを分解する能力を有する場合があります.我々の研究室では昨年やはり大橋先生らとの共同研究成果としてモミラクトン A がイネいもち病菌によって分解・解毒されることを報告しています(Mol. Plant-Microbe Interact. 23, 1000-1011).この論文で,モミラクトン A の分解中間体を GC/MS のピークとしては見つけていたのですが,その構造については未決定でした.今回の今井君の論文はこの宿題を解決するものです.構造決定した化合物はモミラクトン A のラクトン環の脱炭酸と酸化によって得られる 3,6-dioxo-19-nor-9β-pimara-7,15-diene (1) でした.


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化合物 1 の抗菌活性はモミラクトン A とほとんど変わらなかったので,モミラクトン A の解毒には更なる変換が必要だと推定しています.この点については,今後の研究課題です.


修士課程の学生さんの論文が在学中に出てくれる(たぶん今年度中には掲載されるはず)のは,私の指導する学生では初めてのことです.今井君がしっかり実験に取り組んでくれた成果だと思います.


また,博士課程の井坂哲也君を筆頭著者とする論文が J-STAGE で早期公開されました.


Tetsuya Isaka, Morifumi Hasegawa, and Hiroaki Toshima, Biomimetic cyclization of epoxide precursors of indole mono-, sesqui- and diterpene alkaloids by Lewis acids. Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.


学生さんたちの論文発表が続いていますので,この流れに他の学生もどんどん続いて欲しいところです.

2011年11月3日木曜日

植物化学調節学会第 46 回大会

11 月 1 日と 2 日の二日間,栃木県宇都宮市の宇都宮大学峰キャンパスで植物化学調節学会第 46 回大会が開催されました.生物制御化学研究室の修士課程の今井君と井上さんの 2 名,化学生態学研究室の修士課程の山口君と四年生の横倉君の 2 名の合計 4 名の学生さんが茨城大学からポスター発表しました.たぶん,この学会で茨城大学から 4 名も発表するのは初めてのことなのではないかと思います.


学会は 1 日目に化学生態学研究室の 2 名が 3 分間の口頭発表,2 日目に生物制御化学研究室の 2 エ名が口頭発表を行い,2 日目の午後がポスター閲覧と質疑応答の時間でした.残念ながら,最後に発表されたポスター賞には誰も該当しませんでしたが,皆さん落ち着いて発表できましたし,それぞれにとって今後の研究の刺激になったのではないかと思います.


次の学会は 3 月末の京都での農芸化学会ですが,要旨の〆切が 12 月初めで,もうあまり時間がありません.この学会でも学生さんに発表してもらいたいのですが,まだデータが足りてないので,頑張って欲しいと思います.



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2011年10月26日水曜日

研究室セミナー

今週のセミナーもなかなか研究室メンバーのスケジュールが合わずに水曜日午前中という変則的な開催になりました.


論文紹介の担当は修士課程の今井君で,紹介した論文は Yuriko Osakabe, Shinji Mizuno, Hidenori Tanaka, Kyonoshin Maruyama, Keishi Osakabe, Daisuke Todaka, Yasunari Fujita, Masatomo Kobayashi, Kazuo Shinozaki, and Kazuko Yamaguchi-Shinozaki, Overproduction of the Membrane-bound Receptor-like Protein Kinase 1, RPK1, Enhances Abiotic Stress Tolerance in Arabidopsis. J. Biol. Chem., 285(12), 9190-9201 (2010) でした.アブシジン酸のシグナリングに関与する受容体ライクなプロテインキナーゼの過剰発現体が非生物的ストレス耐性を増強させる現象についての論文です.

2011年10月24日月曜日

停電

先週の土曜日は年に一度の電気設備点検のための停電がありました.例年は 9 月の夏休み中に実施されるのですが,今年は東日本大震災の影響で代替の発電機の手配が難しかったために遅れて実施することになったと聞いています.


本当はこの停電の間に研究室でバーベキューに行くという計画があったのですが,天気予報が雨だったので,前日に中止決定されました.代わりに夕方から急遽飲み会が開かれました.

2011年10月11日火曜日

NMR ユーザーズミーティング

先週の金曜日はブルカー・バイオスピン社主催の NMR ユーザーズミーティングに参加してきました.会場は品川駅近くの東京コンファレンスセンター・品川というところでした.

NMR や MS のユーザーズミーティングは日本電子のものには参加したことがあったのですが,ブルカーのものには初めて参加しました.主催者からの新製品・技術情報の提供とユーザー何名かの講演というパターンは大体どちらも似たようなものでした.ブルカーの特徴としては,途中で会場が3つに分かれて事前に申し込んでいたワークショップを聞くという形式になっているところです.日本電子のときは全員が最初から最後まで同じ会場で講演を聞いていました.

今回のユーザーズミーティングの目立った内容は東日本大震災の影響についての報告と液体窒素で冷却する廉価版クライオプローブの紹介だったと思います.

東日本大震災では東京以北のブルカー NMR の超伝導磁石のうち 16 台がクエンチしてしまったそうで,10/7 の時点でうち 8 台が復旧できているそうです.復旧できている 1 台には茨大の機器分析センター(水戸)の 1 台も含まれているはずです.まだ復旧で来ていない NMR についても一応予算的には復旧の見通しが立っているものがほとんどのようでした.結論としては,やはりクエンチから NMR を守るにはなるべく 1 階に設置するというのが重要なことのようです.1 階に設置することによってエレベーターが使えなくても冷媒の補給が行えるという利点もあるということでした.茨大農学部の NMR は 1 階に置いてあって本当に助かりました.

震災関連では埼玉大学の先生がたまたま地震で揺れている最中に NMR 測定を自動で連続的に行っていたそうで,地震の揺れがスペクトルにどのように影響するのかというのが分かる発表をされていてなかなか興味深かったです.

クライオプローブ(Agilent ではコールドプローブ)は本質的に感度の低い分析法である NMR の感度を飛躍的に高める技術で,NMR を使っている人なら誰でも使ってみたいと思っているのですが,導入・維持コストが高いため,なかなか広くは普及していません.今回のユーザーズミーティングで盛んに紹介されていた Prodigy というプローブは液体窒素で冷却するタイプのもので,従来のヘリウムコンプレッサーで冷却するクライオプローブに比べて 1/2 の導入コストと 1/3 のランニングコストという話でした.確か従来型のランニングコストは 200 万円/年ぐらいと聞いているので,1/3 になったからといって,簡単には導入できないと思いますが,確かに安くはなっています(でもやっぱり茨大農学部では無理です).性能的には超伝導磁石 300 MHz 分の感度増強効果があると謳っていました.400, 500 MHz クラスの磁石を使っていて,低分子有機化合物の構造解析に NMR を使っているところをターゲットにしているような感じでした.

その他には,測定やデータ処理をカスタマイズするプログラミングのワークショップなどにも参加しました.総じてブルカーのユーザーズミーティングは参加満足度は高かったと思います.あと,昼食の弁当の量も多くて,これの満足度もありました.懇親会も参加したかったのですが,帰りが遅くなってしまうので,講演だけ聞いて阿見まで戻りました.

2011年10月5日水曜日

研究室セミナー&植物化学調節学会

10 月になって後期の授業も始まりました.本来は生物制御化学研究室&化学生態学研究室のセミナーは火曜日の午後やっていたのですが,都合により後期は水曜日の午後にセミナーを実施することになりました.さらに,10 月は鈴木先生と戸嶋先生,11 月は私の担当する学生実験が 14:40 から始まってしまうので,時間を稼ぐために 12:30 開始というスケジュールになりました.

論文紹介の担当は博士課程の井坂君で,紹介した論文は Kavirayani R. Prasad and Bandita Swain, Total synthesis of panaxytriol and panaxydiol. Tetrahedron: Asymmetry 22(12), 1261-1265 (2011) でした.朝鮮人参から単離されたジアルキン化合物の全合成に関する論文です.

11/1-2 に宇都宮大学で開催される植物化学調節学会のプログラムがウェブに掲載されました.生物制御化学研究室から発表する修士課程の今井君と井上さんはどちらも 11/2 の発表となりました.

11 月 2 日(水)
76. 紫外線照射イネ葉からの新奇ジテルペン化合物 ent-10-oxodepressin の単離
○井上靖乃,阪井美紀,姚群,谷本洋輔,戸嶋浩明,長谷川守文
77. イネフィトアレキシン モミラクトン B のいもち病菌による代謝産物の同定
○今井卓也,戸嶋浩明,長谷川守文