2012年3月26日月曜日

日本農芸化学会 2012 年度大会

3 月 22 ~ 26 日に日本農芸化学会 2012 年度大会京都女子大学などで開催されました.生物制御化学研究室からは博士の学位を授与されたばかりの井坂哲也君が 3/24 に「生合成類似環化反応による新規インドールテルペン類 の合成研究」というタイトルで口頭発表を行いました.井坂君にとっては長かった 8 年間の研究室生活での最後の学会発表となりました.しかし,井坂君の発表のときにはマイクがちゃんと入っていなかったため,会場後部では声が非常に聴き取りづらくなってしまい,非常に残念でした.

今回の農芸化学会では初めて一般講演が各自の持ち込み PC をプロジェクターに接続して行うというやり方になりました.かなりの演題数がある学会なので,トラブルが続出するかもと思っていたのですが,私が聴いた一般講演では大きなトラブルは全くありませんでした.5 ~ 6 演題ごとに十分間の PC 接続チェック時間が設けられていて,トラブルがあった場合は運営側で準備した PC を使うなどといった対策が取られていたようです.私は有機化学系と植物系の会場でしか講演を聴いていないので,他の会場の状況は良く分かりませんが,運営側の対応が適切だったのだと思います.

また,同じく初めてのこととして,冊子体の講演要旨集がなくなり,PDF ファイルのダウンロードでの提供だけになりました.私個人的には重い要旨集を持っていくより iPad だけを持っていく方が便利なので,この変更は歓迎します.ただ,ダウンロードをするのに必要なパスワードが当日申込の人にはその場で渡されて,会場ではインターネット接続サービスの提供もないので,人によっては要旨集を見ることができずに困ったのではないかと思います.

また,個人的なことですが,私は非常に眼が悪いので,学会会場でのスライドを見るのは大変苦労します.従来は単眼鏡とかデジカメの液晶ディスプレイとかを使ってみていたのですが,いずれも視野が狭いため,長時間スライドを使った発表を見るのにはつらいものがありました.最近発売された新しい iPad は,カメラ機能を使うと大きな Retina ディスプレイいっぱいでスライドを見ることができ,私にとっては画期的な視覚補助器具になりました.しかし,農芸化学会は会場内撮影禁止という制限があり,撮影はせずにただ見ているだけなのですが,一度係の方から注意を受けました.眼が悪いので見るのに使っているだけです,と言って見逃してもらったのですが,新しい会場に行く度にちょっと使うのがためらわれました.しかも,三日目の講演からは必ず座長が撮影禁止というアナウンスをするようになり,それでも iPad でスライドを見続けるのはちょっと抵抗がありました.しかし,一度これでスライドを見るのに慣れてしまうと単眼鏡は使えません.開き直って iPad を使い続けました.

スライドについては,国際化への対応という趣旨で,英語で作成することが大会実行委員会から推奨されていました.私が聴いた講演は結構日本語を使っているものも多かったのですが,正直なところ,日本語のスライドの方が圧倒的に分かりやすいと思いました.英語より日本語に慣れているというだけでなく,限られたスペースで情報を伝える場合,漢字はアルファベットに比べてかなり優位性があると思います.やはり,英語でスライドを作る場合,日本語のものをそのまま英訳するのではなく,英語にあったスライドにしないといけないのだと思います.

先週の輪読

先週の木曜日から今週いっぱいは,学会があったり,年度の切替りと学生さんの就職活動時期にもなっていて,研究室に人があまりいない状況なので,輪読はお休みにしました.先週の月曜と水曜の輪読では下記の論文を取り上げました.

49. Pedras, M.S.C., and Khallaf, I. (2012). Molecular interactions of the phytotoxins destruxin B and sirodesmin PL with crucifers and cereals: Metabolism and elicitation of plant defenses. Phytochemistry in press.
50. Pérez-Trujillo, M. et al. (2012). Chiral metabonomics: 1H NMR-based enantiospecific differentiation of metabolites in human urine via direct cosolvation with β-cyclodextrin. Anal. Chem. in press.

2012年3月17日土曜日

連合農学研究科学位授与式 & 謝恩会 & 今週の輪読

3/15(木)に東京農工大学大学院連合農学研究科学位授与式が東京農工大府中キャンパスで開催され,生物制御化学研究室の井坂哲也君にも博士(農学)の学位が授与されました.井坂君は修士課程から研究室に八年間在籍していましたが,ここでやっと一区切りをつけることができました.あとは 3/24 に日本農芸化学会での学会発表がありますので,そこで研究室での有終の美を飾ってもらって,4月からは民間企業で頑張っていただきたいと思います.

3/16(金)に土浦のホテルマロウド筑波で資源生物科学科の謝恩会が開催されました.例年,謝恩会は卒業式の日に開催されているのですが,今年は資源生物科学科の多くの教員が参加する日本農芸化学会大会の日程と重なってしまったため,一週間早く開催することになったようです.この三月には,生物制御化学エ研究室からは博士 1 名,修士 1 名,学部 3 名の学生が卒業・修了します.それぞれ就職・進学先で活躍してくれることを期待しています.

今週の輪読では下記の論文を取り上げました.

44. Cerrudo, I. et al. (2012). Low Red:Far-Red ratios reduce Arabidopsis resistance to Botrytis cinerea and jasmonate responses via a COI1-JAZ10-dependent, salicylic acid-independent mechanism. Plant Physiol. in press.
45. Chizzali, C. et al. (2012). Formation of biphenyl and dibenzofuran phytoalexins in the transition zones of fire blight-infected stems of Malus domestica cv. ‘Holsteiner Cox’ and Pyrus communis cv. ‘Conference’. Phytochemistry in press.
46. Khodakovskaya, M.V., de Silva, K., Biris, A.S., Dervishi, E., and Villagarcia, H. (2012). Carbon nanotubes induce growth enhancement of tobacco cells. ACS Nano in press.
47. Girón-Calva, P.S., Molina-Torres, J., and Heil, M. (2012). Volatile dose and exposure time impact perception in neighboring plants. J. Chem. Ecol. 38: 226–228.
48. Zhu, L. et al. (2012). Immunosuppressive decalin derivatives from red yeast rice. J. Nat. Prod. in press.

2012年3月9日金曜日

今週の輪読

今週の輪読では下記の論文を取り上げました.

39. Luna, E., Bruce, T.J.A., Roberts, M.R., Flors, V., and Ton, J. (2012). Next-generation systemic acquired resistance. Plant Physiol. 158: 844–853.
40. Rasmann, S. et al. (2012). Herbivory in the previous generation primes plants for enhanced insect resistance. Plant Physiol. 158: 854–863.
41. Serrano, M. et al. (2012). Repression of sucrose/ultraviolet B light-induced flavonoid accumulation in microbe-associated molecular pattern-triggered immunity in Arabidopsis. Plant Physiol. 158: 408–422.
42. Kato-Noguchi, H., Tamura, K., Sasaki, H., and Suenaga, K. (2012) Identification of two phytotoxins, blumenol A and grasshopper ketone, in the allelopathic Japanese rice variety Awaakamai. J. Plant Physiol. in press.
43. Mentlak, T.A. et al. (2012). Effector-mediated suppression of chitin-triggered immunity by Magnaporthe oryzae is necessary for rice blast disease. Plant Cell 24: 322–335.

2012年3月5日月曜日

ChromNAV 導入

生物制御化学研究室では天然有機化合物や合成有機化合物の精製や分析の目的で HPLC を良く使っています.研究室の所有している HPLC は日本分光製のものが多く,いずれも十年以上使っている年季の入った装置です.HPLC は比較的枯れた技術ですので,装置の寿命はかなり長いのですが,制御・データ処理コンピュータの方が十年も経つと維持が難しくなってきてしまいます.研究室で使っている HPLC では,フォトダイオードアレイ(PDA)検出器の制御とデータ処理用に Windows 3.1 の PC,2 ポンプグラジェントシステム用に Windows 95 の PC がありました.しかし,今年になって Windows 3.1 の方に接続しているプリンタのインクの製造が打ち切られたりして,このまま使い続けるのはかなり難しい状態になっていました.今年度は幸い予算の都合がついたので,これらの HPLC 用の PC とソフトウェアを最新のものにアップグレードすることになり,今日アップグレード作業が行われました.

新しいソフトウェアは Windows 7 Professional 上で動く ChromNAV というソフトです.一台の PC で同時にグラジェントシステムと PDA 検出器を制御できるようになったので,PC の台数も一台節約できました.特に PDA 検出器の方は従来の Windows 3.1 上でのソフトに比べると格段の進化をしているので,大分使いやすくなったのではないかと期待しています.

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ChomNAV が動いている PC



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ChromNAV で制御する HPLC(右下が PDA 検出器)

2012年3月2日金曜日

今週の輪読

今週の輪読では下記の論文を取り上げました.木曜日は長谷川が出張中だったので,学生さんたちだけでやってもらいました.

34. Igarashi, D., Tsuda, K., and Katagiri, F. (2012). The peptide growth factor, phytosulfokine, attenuates pattern-triggered immunity. Plant J. in press.
35. Heil, M. et al. (2012). How plants sense wounds: damaged-self recognition is based on plant-derived elicitors and induces octadecanoid signaling. PLoS ONE 7: e30537.
36. Neuenschwander, U., Czarniecki, B., and Hermans, I. (2012). Origin of regioselectivity in α-humulene functionalization. J. Org. Chem. in press.
37. Louis, J. et al. (2012). Discrimination of Arabidopsis PAD4 activities in defense against green peach aphid and pathogens. Plant Physiol. in press.
38. Slaughter, A. et al. (2012). Descendants of primed Arabidopsis plants exhibit resistance to biotic stress. Plant Physiol. 158: 835–843.