2011年11月25日金曜日

化学生態学実験 III 終了

本日で長谷川担当の 3 年生向けの学生実験「化学生態学実験 III」の全日程が終了しました.今年は例年に比べて受講者数が多く,器具や機器の不足が心配でしたが,TA やボランティアで手伝ってくれた学生さんたちの協力のおかげで,前半は順調に進みました.


しかし,後半の TLC と GC/MS では例年になくトラブルが多くなってしまい,受講した学生さんたちには迷惑をかけてしまいました.TLC では発色試薬をスプレーするガラス容器のスプレーノズルが欠けているのを気付かずに使っていたため,最初はスプレーがきれいにできずに発色がイマイチでした.GC/MS では,このようなことは今まで無かったのですが,2 班だけを除いて,どの班も検出されたモミラクトン A のピークが予想外に小さくなってしまいました.これは現時点では,原因が良く分かりません.


うまくいかない実験というのもそれはそれで経験にはなるので,しっかりと勉強して良いレポートを書いて欲しいと思います.


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いもち病菌胞子発芽阻害試験で顕微鏡を使い,胞子発芽数を数えているところ

2011年11月17日木曜日

研究室セミナー

昨日の研究室セミナーの論文紹介は化学生態学研究室修士課程の山口君の担当で,紹介した論文は Hiroki Tokunaga, Mikiko Kojima, Takeshi Kuroha, Takashi Ishida, Keiko Sugimoto, Takatoshi Kiba, Hitoshi Sakakibara, Arabidopsis lonely guy (LOG) multiple mutants reveal a central role of the LOG-dependent pathway in cytokinin activation. Plant J., in press でした.サイトカイニンの活性化に関与する LOG タンパク質の役割について,変異体を用いた解析を行った論文です.

2011年11月16日水曜日

菅野紘男博士との共同研究成果が Appl. Entomol. Zool. 誌に受理

元九州沖縄農業研究センターの菅野紘男博士との共同研究成果が日本応用動物昆虫学会の英文誌 Applied Entomology and Zoology に受理されたとの連絡をもらいました.この研究は菅野さんが数年前本研究室に共同研究員として滞在された時に行われたものです.

セジロウンカの加害によって,イネにいもち病菌に対する抵抗性が誘導されるという興味深い現象を菅野さんたちが発見していたのですが,その抵抗性にジャスモン酸やサリチル酸,フィトアレキシンの蓄積が関与しているのではないかと考え,それらの定量を行ったものが今回の論文です.結果としては,ジャスモン酸やサリチル酸の内生量の増加,フィトアレキシンの蓄積がセジロウンカ加害によって引き起こされることが明らかとなりました.昆虫加害によるフィトアレキシンの蓄積については全く報告がないわけではないのですが,報告例は少なく,イネのフィトアレキシンについては病原菌以外の生物による誘導の確認は初めてだと思います.

2011年11月15日火曜日

壁の補修工事開始

今日から震災の影響でひび割れてしまった壁の補修工事が始まりました.今日始まったのは研究室の中庭側の部屋(教員室と測定室)と共通機器室の GC/MS 測定室で,来週の月曜日までかかる予定です.今日は業者さんたちが埃を避けるためのシートを設置して,ひびの割れた部分を削り取る作業をしてくれたようです.NMR 測定室については,超伝導マグネットが近い位置に修繕個所があるため,来週月曜日にメーカーの人も立ち会いで作業してもらう予定です.
長谷川の教員室


2011年11月14日月曜日

化学生態学実験 III & 研究室の壁補修工事準備

今日は化学生態学実験 III の 2 日目です.実際に実験をするのは今日が初日で,イネ葉に紫外線照射をしてフィトアレキシンを蓄積させる実験を行いました.この科目は選択科目なのですが,今年度は受講生が 34 名となり,例年に比べるとかなり多いので,器具や機器がどうしても不足気味になりそうで,スムーズに実験を行えるかどうか心配しています.



研究室の大きな実験室以外の部屋は,東日本大震災でひびの入ってしまった壁の補修作業が明日から一週間行われます.今日はその準備として壁際に置いてある物の移動をしました.一番苦労したのは測定室においてあるフリーザーでした.この際なので,三年ほどやっていなかった霜取りも行いました.LC/MS/MS もシャットダウンして,ちょっと壁から離しました.戸嶋先生や私の教員室も工事が入るので,壁際のコンピュータの置いてあるデスクを動かす必要がありました.私は一週間は iMac ではなく,MacBook Air で仕事をすることになりそうです.


霜取り中のフリーザー

2011年11月11日金曜日

化学生態学実験 III スタート

火曜日には戸嶋先生担当の二年生の学生実験の化学生態学実験 I が終了しましたが,今日から長谷川担当の三年生の学生実験化学生態学実験 III が始まりました.十日間の日程なのですが,一日だけやって週末になってしまうので,今日は実験内容の説明の講義を教室を使って行いました.


この実験は選択科目なので,受講生は年によって変動するのですが,今年は 30 人以上とかなり多めの受講生です.来週から本格的に実験が始まりますが,TA の学生さんに協力してもらいながら首尾よく進めていきたいと思います.

牛久高校で「となりの大学」出前授業

昨日は阿見町のとなりの牛久市にある茨城県立牛久高等学校に出前授業に行ってきました.茨城大学農学部では「となりの大学」(PDF) という近隣高校向けの出前授業メニューを用意していて,今回はこれで呼ばれました.同時に他大学や(おそらく)茨大の他学部の先生も呼ばれていたのですが,皆さん一人で 90 分授業を担当されていましたが,農学部のとなりの大学は 45 分設定になっていたので,我々だけ地域環境科学科の伊丹一浩先生と二人で 90 分の授業を行いました.


前半は伊丹先生が「環境問題入門」というタイトルで講義をして,後半は私が「植物の化学的防衛戦略」というタイトルでの講義をしました.農学系希望者の二年生の皆さん十数名に受講していただきました.

2011年11月10日木曜日

研究室中間発表会

昨日は 9:30-11:30, 12:15-14:20 の時間で生物制御化学研究室と化学生態学研究室合同の博士論文,修士論文,卒業論文の中間発表会が開催されました.例年,研究室の中間発表会は年末に実施していて,それが終われば忘年会というのが恒例になっていましたが,年末に「中間」発表では論文作成には時期的にもう手遅れということになってしまい兼ねないということで,今年から 11 月に実施することになりました.


生物制御化学研究室では,今年度の博士課程修了予定者 1 名,修士課程修了予定者 1 名,卒論提出予定者 4 名です.博士論文の提出は 12 月初め,発表会は 1 月,修論提出は 2 月初め,修論・卒論の発表会は 2 月中旬予定です.何より自分自身が納得のできる論文になるように,あまり多くない残りの時間を有効に使って研究を進めていただきたいところです.

2011年11月8日火曜日

今井卓也君の論文が Biosci. Biotechnol. Biochem. 誌に受理 & 井坂哲也君の論文がオンライン公開

11 月 6 日に修士課程 2 年生の今井卓也君を筆頭著者とする論文が日本農芸化学会の英文誌 Biosci. Biotechnol. Biochem. 誌に受理されました.この論文は今井君の修士論文研究の一部で,農業生物資源研究所の大橋祐子先生らとの共同研究成果です.


Takuya Imai, Yuko Ohashi, Ichiro Mitsuhara, Shigemi Seo, Hiroaki Toshima, and Morifumi Hasegawa, Identification of a degradation intermediate of a rice phytoalexin, momilactone A, by rice blast fungus. Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.


イネいもち病菌がイネの生産する主要なフィトアレキシンであるモミラクトン A を分解するときの中間体の構造解析,合成,定量分析を行った論文です.フィトアレキシンは植物が病原菌の侵入に対して防御反応として蓄積する抗菌活性物質ですが,病原菌はこの防御反応を回避するためにフィトアレキシンを分解する能力を有する場合があります.我々の研究室では昨年やはり大橋先生らとの共同研究成果としてモミラクトン A がイネいもち病菌によって分解・解毒されることを報告しています(Mol. Plant-Microbe Interact. 23, 1000-1011).この論文で,モミラクトン A の分解中間体を GC/MS のピークとしては見つけていたのですが,その構造については未決定でした.今回の今井君の論文はこの宿題を解決するものです.構造決定した化合物はモミラクトン A のラクトン環の脱炭酸と酸化によって得られる 3,6-dioxo-19-nor-9β-pimara-7,15-diene (1) でした.


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化合物 1 の抗菌活性はモミラクトン A とほとんど変わらなかったので,モミラクトン A の解毒には更なる変換が必要だと推定しています.この点については,今後の研究課題です.


修士課程の学生さんの論文が在学中に出てくれる(たぶん今年度中には掲載されるはず)のは,私の指導する学生では初めてのことです.今井君がしっかり実験に取り組んでくれた成果だと思います.


また,博士課程の井坂哲也君を筆頭著者とする論文が J-STAGE で早期公開されました.


Tetsuya Isaka, Morifumi Hasegawa, and Hiroaki Toshima, Biomimetic cyclization of epoxide precursors of indole mono-, sesqui- and diterpene alkaloids by Lewis acids. Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.


学生さんたちの論文発表が続いていますので,この流れに他の学生もどんどん続いて欲しいところです.

2011年11月3日木曜日

植物化学調節学会第 46 回大会

11 月 1 日と 2 日の二日間,栃木県宇都宮市の宇都宮大学峰キャンパスで植物化学調節学会第 46 回大会が開催されました.生物制御化学研究室の修士課程の今井君と井上さんの 2 名,化学生態学研究室の修士課程の山口君と四年生の横倉君の 2 名の合計 4 名の学生さんが茨城大学からポスター発表しました.たぶん,この学会で茨城大学から 4 名も発表するのは初めてのことなのではないかと思います.


学会は 1 日目に化学生態学研究室の 2 名が 3 分間の口頭発表,2 日目に生物制御化学研究室の 2 エ名が口頭発表を行い,2 日目の午後がポスター閲覧と質疑応答の時間でした.残念ながら,最後に発表されたポスター賞には誰も該当しませんでしたが,皆さん落ち着いて発表できましたし,それぞれにとって今後の研究の刺激になったのではないかと思います.


次の学会は 3 月末の京都での農芸化学会ですが,要旨の〆切が 12 月初めで,もうあまり時間がありません.この学会でも学生さんに発表してもらいたいのですが,まだデータが足りてないので,頑張って欲しいと思います.



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